いつまでも親が元気とは限らない……「親のお金」について話し合いましょう

今年のお盆休みに、帰省をして久しぶりに親と話をした、という人もいたかと思います。そのとき、親の老いを改めて感じたり、お金の心配をしたりといった具体的な問題が明らかになったという人もいるのではないでしょうか。今回は、親のお金について、ちょっと考えてみたいと思います。

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親とお金は子供として考えておきたいテーマの1つ

まだまだ元気でしっかりしていると思っていた親の認知能力が知らずに下がっており、オレオレ詐欺や還付金詐欺のような特殊詐欺の被害に遭って、びっくりするようなことも実際にあります。
親とお金のことは、子供としてしっかり考えておきたいテーマのひとつです。

あなたに兄弟・姉妹がいる場合、基本的には協力しながら親とお金の問題と向き合うことになります。
兄弟・姉妹が多いことは、問題をシェアすることができる点では助かりますが、関係者が増えることで話がややこしくなることもあります。

ひとりっ子の場合、決断すれば話は早いものの、親のお金の問題について1人で判断、決断しなければならない大変さがあります。
「お金のことは得意じゃないから……」というわけにはいかないのです。

既婚かシングルかも、親とお金の問題に関係してきます。
シングルの場合、自分の両親についてのみ考えればいいですが、結婚している人はそれぞれの両親について考えていく必要があります。
配偶者の兄弟・姉妹がいる場合、なかなか関わりにくいのも難しいテーマです。

そして、「親のお金」の問題は、男性より女性の問題となることもしばしばあります。
統計的に男性のほうが年上の夫婦が多いため、ひとり残された母親(お金の知識も豊富ではないことが多い)のお金の心配をしてあげる必要が高いからです。

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親の体調の変化を見逃さないように

それでは、「何歳くらい」が、親のお金の心配をする目安となるでしょうか。

介護等の支えがなくても、1人で日常生活ができる年齢を健康寿命といいます。
日本は世界トップクラスの高さとなっています。
統計によれば、男性が72.68年、女性が75.38年とのことです(令和元年)。

60歳代は元気でアクティブなセカンドライフを過ごしていると思っていたら、70歳代の半ばに入ったころ、一気に体力が落ちたり、判断能力が低下していく、ということが起こります。

子供としては、この健康寿命を1つの目安として知っておくといいでしょう。
認知症の有病率が向上するのは、70歳代後半からという調査もありますから、「70歳の半ばになったら、親のお金のこともきちんと考えなくては」というイメージです。

とはいえ、親の健康状況の変化は個人差が大きいところです。
60歳代ですでに闘病していたり、何らかの発病があると、一気に体力を失うこともあります。

一方で、90歳を過ぎていても元気で日常生活を送り、認知能力にも問題がない元気な人もいます。
年に数回の帰省時には直接会って確認し、またLINE等のメッセージやテレビ電話機能などでできるだけ頻繁にやりとりをして、自分の親の体調の変化のシグナルを見逃さないようにしたいところです。

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お金のトラブルを防ぐための対策

親のお金のことを考えるとき、心配なのは認知能力の低下に伴う判断ミスです。

実際、「ウチの親にはオレオレ詐欺なんて関係ないこと」と思っていたら、あっという間にだまされて、数百万円から数千万円を失うような事例が起きています。
できればこうしたトラブルは回避したいところです。

まず、認知能力の低下や判断のミスは誰にでも起こりうるものだ、と考えておきましょう。
そのうえで家族として対策を考えていくことになります。

資産管理については、例えば以下のような取り組みが考えられます。

●取引サービスをシンプルにする……不要なキャッシュカードやクレジットカードを解約する
●使いすぎ防止策を講じる……ATMの引き出し上限を設定したり、日常生活口座の残高を抑える
●周囲のサポート体制を確保する……金融取引時には家族が同席する、任意代理・法定後見制度などを活用する
●お金の流れを見える化しておく……入出金の通知サービスや家計管理ソフトで家族が情報共有する、財産目録を作成しておく

全部を一気に行うことは難しいと思いますが、皆さんのご家庭でも何かできそうなことはないでしょうか。

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親の資産運用の管理について

親のお金の問題といえば、銀行預金を前提として説明してきましたが、「親が投資をしている」というシチュエーションも増えています。

家計の保有する金融資産の半分は高齢者が保有しているといわれます。
多くは不動産や預金・現金となっていますが、投資をする高齢者も多く、例えばNISA口座でみると、60歳代以上が15.8兆円(こちらも全体のほぼ半分)を保有しているそうです。

高齢者が投資をすること自体はまったく問題ありません。
むしろ生きた経済と触れ合うことが生活の良い刺激となる、という人もいます。

一方で、判断能力の低下が生じたときに、投資についてどう対応していくかは考えておいたほうがいいでしょう。
一般論としては、どこかのタイミングで投資を終わらせることも考えたいところですし、投資信託などを活用し、個別株投資のような大きなリスクを抑えて、運用を継続していくことも考えられます。

本人に投資の知識や関心がある親なら、投資を今後どうしていくかのビジョンについて、話し合いをしていくこともできるはずです。
あわせて相談してみるといいでしょう。

まとめ

親が元気なうちに話し合いを

親とお金の問題をいろいろ考えてきましたが、「なかなか話しにくい」という家族が多いようです。
しかし、元気なときのほうが実は話しやすく、また話すべきタイミングです。

ある日突然倒れてしまい、意識不明になった親の病床に駆けつけ、「お父さんは株は持っているの? 証券会社はどこ?」なんて話しかけるわけにはいきません。
認知能力が下がったあとに、本人の同意を得ることも簡単ではありません。

お金の管理を提案したり、認知能力の低下を指摘するのはナーバスな問題で、最初はおそらく嫌がる反応があるかもしれません。
しかし、親自身も自分の将来について心配をしているものです。

近年流行しているエンディングノートを、「私も作ってみるので一緒に書いてみよう」なんて誘ってみるのもいいでしょう。
財産目録や保険証書の置き場所を知っておくだけでも大きなステップです。

お金の問題は、スマホの画面ごしではなかなかうまく伝わらないもの。
年に数回の帰省のとき、ぜひ話し合いの機会を持ってみてください。