コーヒー好きにお勧め スペシャルティコーヒーの魅力
近年、耳にする機会も多くなった「スペシャルティコーヒー」。コーヒー好きの方ならご存じかも知れませんが、知らないという方も多いことでしょう。そこで今回は、スペシャルティコーヒーとは何か、その特別な魅力を解説したいと思います。きっと、毎日のコーヒーがより一層味わい深くなりますよ。
品質管理が徹底されているコーヒー
「スペシャルティコーヒー」は、いったいどんなコーヒーなのか?
実は、その定義は非常に曖昧で、厳格なレギュレーションはありません。
その定義とは、
②カップの中のコーヒーという液体の風味が素晴らしいこと
の2点です。
トレーサビリティ(生産から消費までが追跡可能であること)も、スペシャルティコーヒーの大きな特徴の1つです。
一般的なコーヒー豆(コモデティコーヒー)は先物取引で取引されていて、品質の高いアラビカ種はニューヨークの取引所、インスタントコーヒーや苦味のあるロブスタ種はロンドンの取引所で行われています。
スターバックスコーヒーのコーヒー価格も、このニューヨーク取引所の価格が元にされていると言われます。
一方でスペシャルティコーヒーは、オークション形式や農園との直接取引が採用されており、間に入る仲介業者も少ないため、農園主に直接利益が入ります。
その分、クオリティの高いコーヒー豆を作ることが求められ、どこの農園も試行錯誤を重ねることになります。
そのクオリティを判断するための基準値として用いられるのが、米国スペシャルティコーヒー協会(SCAA)のルールに基づいた評価です。
Qグレーダーと呼ばれる資格保持者が100点満点で採点を行い、80点以上を取得した豆がスペシャルティコーヒーとして流通されます。
ブラジルのダテーラ農園が先駆者
今でこそよく見かけるようになったスペシャルティコーヒーですが、ここまでの道のりは長いものでした。
ブラジルのダテーラ農園が、一番初めにスペシャルティコーヒーを作り出した先駆者です。
ブラジルが世界で一番のコーヒー産出国であることはよく知られています。
放っておいても勝手にコーヒーの木が育ち、収穫できるほどコーヒーの栽培に適した土地、気候なのです。
それだけにわざわざ手間暇をかけて、クオリティの高いコーヒー豆を作ることに対して、当初は他の農園から馬鹿にされていました。
それでも10年もの歳月をかけて、ようやく商品化まで漕ぎ着けたのがダテーラ農園です。
今ではブラジル国内におけるスペシャルティコーヒーの生産者は15万人ほどいると言われており、その牽引役のような存在になっています。
お茶農園の中でも、日当たりによって玉露になったり、日常づかいで飲まれるお茶になったりと銘柄が変わるように、コーヒーも同じ農園の中でもクオリティに差が出ます。
その年に出来の悪かったものは、出荷せずにそのままにしておくことも重要です。
そのコーヒーの実が野鳥たちのエサになるためです。
全部を収穫してしまっては彼らが食べるものがなくなってしまいます。
こうしたサステナビリティにも配慮した生産方法をとっているのも、この農園に代表されるスペシャルティコーヒーの大きな特徴の1つです。
スタバが一大ムーブメントを起こした
さて、いわゆる「サードウェーブコーヒー」とも呼ばれるムーブメントがすっかり定着し、今はスペシャルティコーヒーのような質の良いコーヒーを自宅で飲まれる方が増えました。
その前のムーブメントがセカンド、それはスターバックスコーヒーがもたらしたエスプレッソブームです。
かつてスターバックスコーヒーの日本上陸まで、コーヒーが提供される喫茶店といえば、タバコを吸う場所という印象が強く、女性客はまだまだ少ない場所でした。
それに対してスターバックスは当初から店内禁煙とし、ゆったりしたソファを増やして、あえて席数を減らす戦略に。
カップもかわいらしいものにすることでテイクアウト客を増やし、街でそのカップをもつ姿がトレンドとなりました。
こうした時代の流れに応じて、コーヒーはどんどん一般的なもの、お家で飲まれるものにまで変化してきました。
では、この後のトレンドは一体どんなものがくるのでしょうか。
それが「アナエロビックコーヒー」が牽引する、「質の良いものを特別な形で飲む」スタイルです。
独特のフレーバーを味わえるコーヒー
「アナエロビックファーメンテーション」は、スペシャルティコーヒーの名産国・コスタリカで近年生まれた、新しい精製方法のこと。
コーヒー豆の精製時に豆を密閉して酸素を遮断し、嫌気性の微生物の働きを活発にさせることで、発酵を促す手間がかかる手法です。
コーヒーの概念を覆すような、独特のフレーバーが味わえます。あるものはブランデーのような味わいであったり、紅茶のようであったり、ピーチのようなフルーツ風味が強いものであったり。
いずれにしても個性が強いコーヒーなので、楽しみ方もこれまでとは違ってきます。
楽しみ方としては、ストレートでその個性的な味を楽しんでいただく、というのが一番です。
毎日日常的に飲むものというよりも、ウイスキーで言うとラフロイグのように、クセを楽しむ。
そういう楽しみ方に近い感じです。
浅煎りが多いため、チョコレートのようなものよりフルーツを使ったようなスイーツ、例えば桃のタルトなどは相性がいいでしょう。
豆のフレーバーの傾向に合わせて、同じ果物のスイーツを合わせればペアリングもバッチリです。
安い珈琲を大量にではなく、質のいいコーヒーを特別な感じで飲む、という傾向が強まってきています。
ワインと同じようにペアリングを提案するスタイルも今後出てくるでしょう。
このスイーツにこのコーヒー、など1つずつ組み合わせが決まっているような、高価格帯のお店も増えてくるのではないでしょうか。
まとめ
新たな冒険をする気持ちで楽しんでみて
こうした時代ごとのトレンドを追ってみると、コーヒーの味わいや面白さもまた違った形で感じられるかと思います。
アナエロビックコーヒーは、日本でも一部のコーヒー専門店で取り扱う店が増えてきましたが、まだまだ少数です。
ぜひ見かけた際には試してみてください。
すでに定着した風潮のあるスペシャルティコーヒーにも、まだまだこんな新しい可能性があるのだと、きっと驚かれることでしょう。
新たな冒険をする気持ちで楽しんでみてください。